2012年3月5日月曜日

昔の教科書から-3

 
 戦時中の六年生の国語の教科書から、です。

  大平洋

 日本の北東から、
 南西の岸へかけ、
 遠くわが南洋の島々まで、
 太平洋の波は、ひたひたと打ち寄せる。

 北、ベーリングの荒海を巻き、
 南、南極海の氷原に連なり、アメリカ大陸に沿うてひろがる
 「太平洋」-------
 それは、世界第一の海洋の名である。

 島々は、大空の星座のごとく並び、
 艦船は、魚群のごとく進み、
 航空機は、燕のごとく渡り、
 世界の電波は、
 この海洋を越えて縦横に脈うつ。

 かなた、熱帯の海から
 流れ起こる黒潮、
 わが大日本の磯を洗ひながら、
 北上し、
 東へ転じて、
 遥かにアメリカの大陸をつく。

 更にわが南洋から
 巻き起こる颱風(たいふう)は、
 太平洋、
 南支那海、
 東支那海、
 日本海、
 オホーツク開------
 海といふ海、
 水といふ水に號令して、
 世界最大の波紋を描く。

 黒潮と颱風と、
 その焦点に、
 神は大八島を生み、
 皇祖皇宗は国を肇めたまふ。
 そこ世界の原動力が 力強くひそみ、
 最高文化の源泉が高鳴っているのだ。

 日向(ひゅうが)を船出して、
 都し給う国は大和(やまと)、
 わが大日本はおほやまと、
 また浦安の国であるやうに、
 太平洋は、
 皇国の鎮めによってのみ、
 とこしへに「太平」の海なのである。
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現在でこそ、これは単なるホラに過ぎない----と、思われる御仁もおられるとは思うのですが、ホラも、このレベルに達すると立派なもので、
子供ながらも、何と表現してよいものやら一種の催眠術をかけられた如く、いい気持ち----と云うより、何かエラクなった気持ちになるものでしたよ。


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