戦時中の六年生の国語の教科書から、です。
大平洋
日本の北東から、
南西の岸へかけ、
遠くわが南洋の島々まで、
太平洋の波は、ひたひたと打ち寄せる。
北、ベーリングの荒海を巻き、
南、南極海の氷原に連なり、アメリカ大陸に沿うてひろがる
「太平洋」-------
それは、世界第一の海洋の名である。
島々は、大空の星座のごとく並び、
艦船は、魚群のごとく進み、
航空機は、燕のごとく渡り、
世界の電波は、
この海洋を越えて縦横に脈うつ。
かなた、熱帯の海から
流れ起こる黒潮、
わが大日本の磯を洗ひながら、
北上し、
東へ転じて、
遥かにアメリカの大陸をつく。
更にわが南洋から
巻き起こる颱風(たいふう)は、
太平洋、
南支那海、
東支那海、
日本海、
オホーツク開------
海といふ海、
水といふ水に號令して、
世界最大の波紋を描く。
黒潮と颱風と、
その焦点に、
神は大八島を生み、
皇祖皇宗は国を肇めたまふ。
そこ世界の原動力が 力強くひそみ、
最高文化の源泉が高鳴っているのだ。
日向(ひゅうが)を船出して、
都し給う国は大和(やまと)、
わが大日本はおほやまと、
また浦安の国であるやうに、
太平洋は、
皇国の鎮めによってのみ、
とこしへに「太平」の海なのである。
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現在でこそ、これは単なるホラに過ぎない----と、思われる御仁もおられるとは思うのですが、ホラも、このレベルに達すると立派なもので、
子供ながらも、何と表現してよいものやら一種の催眠術をかけられた如く、いい気持ち----と云うより、何かエラクなった気持ちになるものでしたよ。
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