今や硫黄島を右翼基地に、沖縄島を左翼基地になさんとする敵が、わが本土心臓部に対して直接攻撃を行う戦形を取り得る至ったことは、残念ながrこれを認めねばならぬ。
本土に接近した敵が、今後われわれに対し、いかなる作戦をとって侵冦の歩度をせばめて来るか、既に「来らざるを待つ」の楽観を抱くべき事態ではもとよりない。しかし真に「待つ」態勢を言葉の上ではなく、現実の姿となすために、われわれは敵の侵襲の企画を一応頭に入れ、敵前に断行すべきは即刻これを実行せねばならぬ段階にある。
目標は日本の心臓部 キングの面憎い掲言
米連合艦隊司令長官兼海軍作戦部長アーネスト・キングは、海軍年次報告の中に於いて
「大平洋における米国の作戦は、<跳躍作戦>とも呼び得るが、この作戦の基礎をなす構想は、米国軍の作戦に必要な島を奪取する一方、作戦に絶対必要でない多くの敵の拠点----強固に防衛された---を取り残して進むことにある。即ち米国海軍は、日本軍の基地と基地を結ぶ連絡を遮断した結果、これらの孤立化した日本軍の基地は既に無害となり、米国軍は、これらの基地の占領に兵力を消費する必要を認めなくなった。」と述べている。
これは、ブーゲンビル、ラバウル、レイテ島、ルソン島を戦闘状態のまま取り残し、台湾を迂回して沖縄侵攻し来った敵の手口である。そして彼は今後の作戦に対して云う。
「我々は、現在までのところ、日本の心臓部に攻撃を加え得る基地を獲得するにすぎぬ。米国の目標は日本の心臓部である。」と。
彼はわが本土直接攻撃を意図しつつあると見るべきであろう。
先ず大陸接岸作戦 ニミッツ年来の野望
ニミッツの不逞なる宿志は大陸接岸作戦である。
「米軍は日本を最後的に破り得る基地を獲得するため、大平洋を横断して支那大陸への到達を企画している。一度この足場が出来たとき、日本空襲も意のままとなろう。」
これは昨年2月彼が声明した言葉である。南支沿岸に橋頭堡を設置し、在支米軍の強化と共に、対日侵攻の足場とすることは、彼の大平洋作戦の唯一の計画であった。しかし昨秋わが南支作戦が行われ、大陸東西分断作戦が敢行された際、この野望は一応挫折したかに見えた。
その後、戦局の進展と共に、敵機動部隊が自由に東支那海を遊弋するに至るや、ニミッツの野望は、再び敵の対日作戦論の流れの中に生き返って来た。
「全面的な戦略はアジア大陸に対する上陸作戦にある。」との彼の根本理念は、在支米司令官ウエデイマイヤーによって支持されている。
彼は云う。「島伝いの飛び石作戦では日本を撃破できるとは考え得られない。日本は今次戦争の最後の決戦に備えて自ら大陸戦略に没入した。この日本軍と相対し、かつ、空軍を使用するには大陸軍を必要とする。」と。
国務次官グルー、海軍長官フオレスタル等も、大陸接岸作戦論に傾いている。
直線上陸の一本槍 ハルゼイの野牛戦法
ハルゼイは本土直接上陸の一本槍だ。「野牛」と云う綽名が示すように、獰猛で貪欲で強引な彼は、マリアナ基地より硫黄島へ、硫黄島より、わが本土心臓部へ----の直接法的な侵攻を根本理念としている。先頃、本国でキング、ニミッツ、彼ハルゼイ、更にウエデマイヤーうを加えて開かれた作戦会議においても、ハルゼイ・・・・に主張したことであろう。
大陸接岸作戦の構想は、前述のように、敵の軍事指導者が支持しているのにも拘らず、硫黄島の喪失、沖縄島への敵上陸以来、この作戦は一般軍事評論家(例えば、ハンソン・ボールドウインの如き)の間にも修正されて来た。
ハルゼイの「野牛戦」法の尻押しをしているようである。これは主として、大陸接岸作戦に重大な役割を受け持つべき重慶の戦力が、余りにも貧弱なのに失望したせいもあろうが、敵が如何にしても早急に戦いを決せんとする焦慮の現れであることも事実だ。
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戦時中に出た文面ですが、戦後になって一般に発表されたものです。今、この3人の戦略論を読んでみると、結局は、事態はキングの主張に従って進められて来た事が分ります。然し、不思議に思うのは、戦時中にして彼等のポリシーが、どうしてこちら側に筒抜けになっているのか----分りませんね。意図的に洩らすとしたら、日本を撹乱させるべく別の論法をトリックとして流してもよかろう、と思いますよ。これだけ堂々と戦略の奥義を披露させて頂いたのでは申し訳ない気がしてしまいます。
事実、敵は島伝いに攻めて来る、とは当時から広く流布されており、事実状況はその通り進んで来たわけですから敵の作戦は正しかったのですよ。そんなバカな話ってあるのだろうか?。そこまでノウノウと言わせしむる程こちらは舐められていたのでしょうか?。そうだったのでしょうね。
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以上、私の切り抜き帳からです。
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