その「飛行少年」の 多分昭和20年8月号、つまり最後になってしまった号に、なんと、新しく空想科学小説が掲載されたのですよ。その名は「ピカピカ小父さん」だったと思います。間違いありません。著者はこれも多分----ですが 、海野十三でした。
敗色濃い日本の危機を救うため、突然現れたのがピカピカ小父さんでした。小父さんは、普段は普通の小父さんだったのですが、いざ空襲警報が鳴り響くや、着ている上着を脱ぎ捨て、そのまま空中高く迄飛び上がり、群れをなして押し寄せて来るB-29の中に両手を広げ、まるで戦闘機のように飛んでは(鉄腕アトムのように)自由自在に近寄って、何やらピカピカと閃光を放ってB-29を打ち落としたのでした。
地上でそれを見ていた少年達は、驚きと共に大きく拍手喝采をして、只々喜び合った----------というストーリーだったと思いますね。
なにせ戦後も半世紀以上たった現在ですから、覚えているのはそこまで。
然し、本当にそんな小父さんがいたらいいなあ--と思ったのは私だけではなかったと思いますよ。子供ならずとも日本人みんながそんな光景を夢見ていた筈です。そんな夢にすがる外に戦局の悪化を解決する方法はないと思える頃でしたから。
〜〜とは言え、勿論、それだけの気持ちを只々持ち続けていたか、となると決してそうではありませんでしたね。子供心ながらも、そんな夢を見るほか解決がない、という事に、やりきれない空しさみたいな空虚感も感じていたからです。
終戦とともに「飛行少年」は廃刊になってしまいました。従って、ピカピカ小父さんも一回だけの登場で終わってしまいました。その後、その小父さんはどうなったものやら、その行く末についてはさすがの著者も書き続ける事は出来ずに終わってしまったのでしょう。
その本の事、そしてその小説の事を記憶されている方、と云っても多分誰も居ないだろうとは思うものの、もし居られましたらご連絡下さいませ。その時は、私は、もしかしたら「ピカピカ小父さん」が地上に降り立って私を訪ねて来て下さった、と今更であれ本当にそう思うに違いありません。
※ 載せた絵は検索からお借りした当時の「飛行少年」。但し上記文面掲載号ではありません。
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