2012年2月22日水曜日

金子みすゞ-3

 金子みすずは、昭和初期に26歳で自らの命を絶った薄幸の女性です。

 詩人である彼女の名はこれまであまり知られておらず、従って彼女の作品も長く埋もれたまま世評を受ける事もなく忘れ去られていたとの事ですが、最近になって急に注目され改めて脚光を浴びるようになってきた言わば「復活の詩人」だと云われています。
 詩の題材は身のまわりの平凡なものが多く、奇を衒ったものは何一つ見られませんが、それらを見つめる目には確かに非凡なものがあり、その詩情の豊かさには驚くべき感性の鋭さを感じ取る事が出来ます。


 ここではそれらの中から太陽や月に託して歌い上げた数篇の小品を取り上げてみました。

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   日の光
 おてんとうさまのお使いが
 揃って空をたちました。
 みちで出逢ったみなみ風
 (何しに、どこへ。)とききました。

 一人は答へていひました。
 (この「明るさ」を地に撒くの、
 みんながお仕事できるやう。)

 一人はさもさも嬉しさう。
 (私はお花を咲かせるの、
 世界を楽しくするために。)


 一人はやさしく、おとなしく、
 (私は清いたましひの、
 のぼる反り橋かけるのよ。)

 残った一人はさみしさう。
 (私は「影」を作るため、
 やっぱりいっしょにまいります。) 
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    昼の月

 しゃぼん玉みたいな
 お月さま
 風吹きや、消えそな
 お月さま。

 いまごろ
 どっかのお国では、
 砂漠をわたる
 旅びとが、
 暗い、暗いと
 いってましょ。

 白いおひるの
 お月さま、
 なぜなぜ
 行ってあげないの。
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  金お好きな王さま

 金のお好きな王さまの
 御殿は金になりました。

 王さまのお手が触れるとき、
 薔薇も残らず金でした。

 王さまのお手が抱くときに、
 おひめさまさへ、金でした。

 王さまのお手のとどくとこ、
 世界はみんな金でした。

 けれども、けれども、
 そのときに
 空はやっぱり青でした。

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   星たんぽぽ

  青いお空のそこふかく、
  海のこいしのそのように、フォント サイズ
  夜がくるまでしずんでる、
  昼のお星はめにみえぬ。
  見えぬけれどもあるんだよ。
  見えぬものでもあるんだよ。

  ちってすがれたたんぽぽの、
  かわらのすきに、だァまって、
  春のくるまでかくれてる、
  つよいその根はめにみえぬ。
  見えぬけれどもあるんだよ。
  見えぬものでもあるんだよ。 

 ※ 絵は「講談社の絵本 童謡画集」より。「ジャンケンポンヨ」 昭和12年発行

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