粥 ここにして これあり これぞ この米のかゆはろばろと数千里 よよあし原みづほの国のみたからだ ひととせを汗にまみれて 磨き上げたる 真珠宝石 わだつみの逆巻く潮を のりきりて いのちに代へて海軍さんの 護り来し神のたまもの 敵機の下をころびて 雨なすたまの中はひつ 汲みたる水を 飯盒にいれ 爆撃ごとに火を消して 去りては又焚きつけ つとめて煙出さぬごとく ねじり鉢巻して焚き上げたる この味は二つなし いささかの塩っぱい海水に とぎしたの(1字不明)も (わが涙までまじりしならじ) いざ喰らへ わが戦友(とも)よ 喰はで死にし わが戦友(とも)よ これぞこの米の粥ぞ 吉田 嘉七 -----------------------------------------------------------------われは信ず 一、ジヤングルに深くこもれば 雨は夜々肌へを洗ひ壕内に日々を送りて敵弾を常に浴びつついつの日に友軍機飛び糧来るや われらは知らずされどただわれらは信ずわれらは勝つと二、幾日ぞ弾丸(たま)を撃たざる 幾日ぞ米を喰はざる屋根なせる「星」の翼(「星」とはこの場合「星条旗」を指す)ジャングルに木のかげは失せ嵐なす敵の弾丸につぎつぎに友はたふれぬされどなおわれらは信ずわれらは勝つと三、みかへればやせさらばえて 肉そげし ほほよ 腕(かひな)よよし弾丸は免れ得とも長くよし 生きてあるまじ友軍機いまだ飛ばざる糧秣(りょうまつ)も遂に来らずしかも尚われらは信ず御国は勝つと 吉田 嘉七
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