【夜明け】
十六夜の月影は
西空の屋根の上で
疲れて、一面に漂っている。
オリオンが
必死にもがきながら
ずるずると傾いていく。
巨大な獣の断末魔のような重苦しい叫びが
月光に煙る空をどよもして
冷たい静寂(しじま)が震動する。
お聞き――
あれは冬の一夜を
大空に君臨したグレート・オリオンの
あえぎながらの最後の呻き。
だがやがて
オリオンの巨影が地平線の下にひきずりこまれたあとには
その最後の呻き声の余韻は
たくましい朝の雑音に変わっていくのだ。
ピシッ
どこかで大地が凍みわれる。
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前述の「千野敏子 葦折れぬ」の詩から一編載せてみました。かなり激しい情感が伝わって来るものでした。
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